岩下栄一の県政人語

岩下栄一の県政人語1.30  蒲島県政4期16年の歩みを振り返る

  • 2024.1.30

~災害からの復興とTSMCへの対応に注力~

蒲島郁夫知事が四期目の任期を最後に辞任することを表明した。2008年4月の就任会見で、県政の緊急課題として財政再建、川辺川ダム、水俣病問題の三つを掲げた。財政再建の一環として「給料を月額100万円カットする」と宣言して公約を着実に実現していった。そこで今回は、県政史上最長となった4期16年の蒲島県政の歩みを振りかえってみたい。

就任会見を行う蒲島知事

蒲島郁夫知事にとって最も大きな決断の一つは川辺川ダム計画の白紙撤回だった。知事選の中で支援を受けた自民党の考えとは異なる立場をとることになった川辺川ダムに関しては「現在の民意は球磨川を守っていくことだ」とし、県民の高い支持を得ながら方向性を示した。ところが令和2年7月に球磨川流域を襲った豪雨災害をふまえて方向性を転換。国が進める流水型ダム建設を容認する考えを表明した。

蒲島知事は民意の変化を踏まえて清流と命の両方を守る緑の流域治水の考え方を公表することになる。

蒲島知事が1期目の課題に挙げた財政再建は『リーマン・ショック』という外的要因が大きい中で職員数の削減や給与抑制、補助金見直しなどを進めた。就任時には一兆円にまで膨れ上がっていた県債残高は、直近の2023年3月末時点では8884億円にまで減らしてきている。2期目に入る直前には国に働きかけ、熊本市の政令指定都市移行を実現させる。また、くまモンを「営業部長」に就任させるなど熊本の国内外へのPRにも力を注いだ。しかし、3期目から逆境が次々と訪れる。2016年4月に起きた熊本地震、2020年2月に県内初の感染者が確認された新型コロナウイルスの拡大、そして令和2年7月豪雨災害。

これらの災害対応に奔走する蒲島知事は2020年3月の知事選ではコロナ対応の指揮をとり、遊説は行わない選挙戦で初の4期目を迎えた。

こうした逆境に正面から取り組む県政にとって100年に1度のビッグチャンスが訪れる。それは世界最大の半導体受託製造企業TSMCの熊本進出だ。この機会を活かすために、現在も周辺地域の交通渋滞解消に向けた道路整備や地下水の保全などに全力を注ぐ。県政の良き流れをさらに発展させる新たなリーダーにバトンタッチする時がすぐそこに迫ってきている。

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