著者の重光葵は、戦前中華民国との停戦協定をまとめるもテロで片脚を失う。ハンデにも挫けず外務次官・駐在大使として欧州戦への日本介入回避に努めた重光。戦中も外務大臣の立場でアジア諸国の人種差別撤廃と自主独立に向け尽力する。終戦時は首席全権として降伏文書に調印し、戦後も国際派政治家として活躍した。非軍人でありながらA級戦犯容疑者として収監された重光が巣鴨プリズンで便箋に書いた本書には検事、裁判長、弁護人らの言動、A級戦犯として捕らえられた人々の横顔、重光の思想などが詳細に記された貴重な資料である。
重光葵 ハート出版 税込2750円